新NISA『全部オルカン』は本当にベストか
INVEST · 情報基準日 2026-05-20 · 約2,500字 · 約5分
「新NISAは全部オルカンでいい」——この言葉を、ここ2〜3年でかなり耳にしてきた方も多いと思います。
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)、通称オルカン。信託報酬は年 0.05775%(税込)まで下がっており、純資産総額は2026年2月に S&P500型を抜いて、国内公募投資信託として最大規模になったと報じられています。「これ1本でいい」という主張に、合理性があるのは間違いありません。
ただ、マイレージ・ポートフォリオ社の編集部としては、ここで一度立ち止まりたいと考えています。「マイルで自由に旅をする」設計と、「投資で老後の自由度を作る」設計を並べた時、本当に "全部オルカン" が最適解なのか——という視点です。
マイル:「みんなオルカンって言うから、それで合ってるんじゃないの?」
執事H:「お嬢様、『みんなが言っている』と『お嬢様にとって最適』は、必ずしも一致いたしません。」
ポルト:「合理性は大事じゃ。ただし合理性は1軸ではないのじゃよ。」
客観的事実 —— オルカン・S&P500・国内債券系の現在地
まず情報基準日(2026-05-20)時点での客観的事実を整理します。
| 項目 | eMAXIS Slim 全世界株式(オルカン) | eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) |
|---|---|---|
| 信託報酬(年・税込) | 0.05775% | 0.08140%(10兆円超部分は 0.07568%) |
| 連動指数 | MSCI ACWI | S&P500 |
| 米国比率 | 約63%(2025年4月時点) | 100% |
| 構成銘柄数 | 約2,900銘柄 | 500銘柄 |
| 純資産総額(2026-05) | 約11.4兆円規模(国内最大) | 約11.4兆円規模 |
新NISAの年間投資枠は、つみたて投資枠 120万円 + 成長投資枠 240万円 = 合計360万円。生涯非課税保有限度額は1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)、というのが2026-05時点の制度です。
ここまでが「数字として確実なこと」です。
「みんなオルカン」と言われる理由
オルカン推奨の論拠は、おおむね以下の通り整理できます。
- 時価総額加重で全世界の経済成長を取り込める(米国一極リスクを薄められる)
- 米国比率が下がれば自動的に他地域へリバランスされる(自分で判断しなくていい)
- 信託報酬が業界最低水準(コスト面で実質ベストに近い)
- これ1本で完結する(複数商品の管理コストがゼロ)
これらはすべて事実ベースの利点です。否定する材料はあまりありません。
ただし「自由度」軸で見ると、別の評価になる
ここからがマイレージ・ポートフォリオ社編集部の論点です。
「みんなオルカン」論は、合理性軸でほぼ閉じている話なんですね。ただ、マイル戦略を本気で並走させる方の場合、「何に・いつ・どれくらい使うか」の自由度が、もう一つの大事な物差しになると言われています。
具体的に言うと、
- 数年後にビジネスクラスでヨーロッパに飛びたい
- 子の進学や親の介護で、流動性が要る局面がくるかもしれない
- 副業や独立を視野に入れていて、生活費の組み替えが起こり得る
——こういう将来シナリオを抱えていると、「全資産の運用枠 = 全世界株式」一本だと、現金化したいタイミングで含み損を抱えていた時の選択肢が狭まる という見方もあります。
ここは年齢で切る話ではなく、価値観で切る話 だと編集部は考えています。30代でも「定年まで触らない」確信がある方ならオルカン一本でも問題ありませんし、50代でも「あと10年は積みっぱなしでいい」と思える方なら同じく問題はない。逆に、20代でも「3年後の独立資金を貯めている」フェーズなら、株式100%は重い可能性があります。
3つの選択肢を冷静に評価する
ここからは判断フレームです。新NISAでの主軸として、現実的な3択を整理します。
A. オルカン一本(eMAXIS Slim 全世界株式)
- 向いている人:「迷う時間を持ちたくない」「20〜30年スパンで触らない確信がある」「米国一極リスクを意識しておきたい」
- コスト: 信託報酬 年 0.05775%(国内最低水準)
- 将来の柔軟性: 含み益期は問題なし。含み損期に取り崩しが要ると、設計が崩れる可能性
- マイル戦略との相性: 旅行費用は別口座の現金 + マイルで賄える前提なら問題なし
B. S&P500一本(eMAXIS Slim 米国株式)
- 向いている人:「米国経済の成長を信じる」「過去20年のリターン実績を重視する」
- コスト: 信託報酬 年 0.08140%(10兆円超部分は0.07568%。オルカンよりわずかに高い)
- 集中リスク: 米国100%。米ドル安局面・米国経済の長期停滞局面では、オルカンの方が下振れが小さいと言われています
- マイル戦略との相性: 米国偏重ゆえに「ドル建て資産」としての性格が強い。米系航空会社のマイル(United / American等)を貯める方には、心理的に整合性がある面も
C. 分散ポートフォリオ(オルカン 70% + 国内債券系 20% + 現金枠 10% 等)
- 向いている人:「数年単位で取り崩す可能性がある」「マイル発券・ホテル予約等で、現金の機動性を残したい」「含み損の心理負担を下げたい」
- コスト: 国内債券系インデックスファンドの信託報酬は、商品により 0.1〜0.2% 程度。全体加重平均はオルカン単独よりやや上がります
- リターン: 株式100%より理論期待値は下がる。ただし標準偏差(振れ幅) が下がるため、取り崩し時の事故率は下がるという見方もあります
- マイル戦略との相性: 自由度軸でみると相性が良い。「運用と旅の予算を、心理的に分けやすい」構造になる
信託報酬改定リスクは、NISA制度自体より現実的
NISA制度そのものは2024年改正以降、しばらく安定して運用されると言われています。ただし「運用会社の信託報酬は改定される」という事実は、案外見落とされがちです。
実際 SBIアセットマネジメントは2026年2月1日に、バンガード社ETFの総経費率引き下げに連動して、複数の投資信託で信託報酬の引き下げを発表しています。引き下げは投資家にとって良い変更ですが、逆方向(引き上げ)が将来絶対にないとは断言できません。
また、純資産が一定額を超えた部分で信託報酬がさらに下がる「受益者還元型」を採用している商品もあります(eMAXIS Slim S&P500は10兆円超部分が 0.07568%)。長期保有を前提にするなら、こうした構造変更も含めて、年に1回はファンドの目論見書を読み直す くらいの距離感が現実的だと思います。
「選んで終わり」ではなく、「選んで、年1回チェックする」が、信託報酬という極めて低コストな商品群においても妥当だと、編集部としては読んでいます。
MP判定 —— 「正解」は自由度設計で変わる
MP判定:
- A. オルカン一本
→ 合理性 ★★★★★ / 快適性 ★★★★★ / 自由度 ★★★☆☆
→ 「20年触らない確信」が前提条件。マイル発券資金は別口座必須
- B. S&P500一本
→ 合理性 ★★★★☆ / 快適性 ★★★★☆ / 自由度 ★★★☆☆
→ 米国集中リスクを許容できる方向け。米系マイルを貯める方には心理整合性あり
- C. 分散ポートフォリオ(株式 + 債券系 + 現金枠)
→ 合理性 ★★★☆☆ / 快適性 ★★★☆☆ / 自由度 ★★★★★
→ 取り崩しが視野に入る方・マイル旅の機動性を重視する方に納得感
おすすめ度: 立場で変わる。「みんなオルカン」は思考停止になりやすい
執事Hからひとこと:「今後5年以内に取り崩す可能性があるかどうか ——これを最初に整理されますと、Aで足りるか Cの方が安心かが、おのずと見えてまいります。」
マイルと投資の交差点
SFC PLUS の年300万決済問題 や JGC の長期戦設計 で見てきたとおり、「マイルで自由に旅をする」設計には、長期の家計設計が並走する必要があります。
新NISAで何を積むかは、その家計設計の "もう一方の翼" にあたると言われています。
- 旅は「いつ・どこに行きたいか」を自分で決められる
- 投資は「いつ・どれくらい使えるか」を自分で決められる
——この2つが噛み合うと、人生の自由度が立体的に上がる、という整理ができそうです。逆に片方だけ最適化しても、もう片方が縛りになることがあります。
「全部オルカン」が悪いわけではなく、「自分の自由度設計と、オルカン一本が噛み合っているか」を一度だけ確認しておく——それが、編集部としてお勧めしたい姿勢です。
余韻 —— 「最適解」はひとつではないのかもしれない
マイル:「結局、オルカンでもS&P500でもいいってこと?」
ポルト:「『どっちでもいい』ではなく、『何のためかで答えが変わる』、ということじゃな。」
執事H:「お嬢様、5年後のお嬢様が、今のご自身に何と言うかをご想像ください。それが、たぶん最初の答えでございます。」
「みんながやっているから」で選ぶのは、楽です。ただ、5年後・10年後に「この設計でよかった」と思えるかどうかは、自分の自由度のかたちと擦り合わせた人だけが、たどり着けるところがあるのかもしれません。
新NISAの上限は1,800万円。これを「何のために」積むのか——その問いを一度だけ、自分で言語化しておくと、その後の調整がぐっと楽になると思います。
口座開設・家計管理のツール
新NISA の口座選びと、マイル戦略の家計設計を同時に動かすなら、証券口座と資産管理ツールの選択が重要になります。
- GMOクリック証券 —— 手数料競争力が高いネット証券。新NISA の投信積立口座としての選択肢。口座開設でポイント還元キャンペーンを実施していることもある(要時点確認)
- 楽天証券 —— 楽天カードや楽天市場との連携によるポイント還元が特徴のネット証券。楽天キャッシュで投信積立(月5万円上限)もでき、楽天経済圏を活用する方と相性が良い
- 松井証券 —— 日本株売買手数料が1日約定50万円まで無料、米国株手数料も業界最安水準。新NISA の投信積立口座+米国ETFや個別株運用を視野に入れる場合の選択肢として候補に置ける(
)
- マネーフォワード ME —— 銀行・証券・クレカを一元管理できる家計管理アプリ。ANAカードの月次決済額や NISA 残高をダッシュボードで確認でき、年300万決済の進捗管理にも活用可能
新NISA 成長投資枠で米国 ETF を買付ける場合、円→ドルの為替手数料が積み重なると長期でコストロスになる傾向があります。マネックス証券は米国株の買付時の為替手数料が 0 円とされており(2026-05 時点・要最新確認)、米国株や米国 ETF を主軸に組み込む設計を検討する方の選択肢のひとつとして候補に置けます。
本記事は松井証券(JANet)・マネックス証券(アクセストレード)のアフィリエイトリンクを含みます。本人申込・ポイントバック禁止。特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。
参照(情報基準日 2026-05-20)
- eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) 公式
- eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) 公式
- 金融庁 NISA特設ウェブサイト
- 各種投資信託比較レポート(2026年5月時点)
関連記事
- INVEST投資を頑張りすぎて、今を楽しめない人へ —— 「貯める力」と「使う力」のバランス設計資産形成に真面目に取り組むほど、お金を使うことに罪悪感が生まれることがある。投資を頑張りすぎて今を楽しめなくなる構造を整理し、人生のポートフォリオとして「使う力」も設計する考え方を提案。MP判定付き。…
- INVEST若いうちに資産形成を始めると、旅の選択肢は増えるのか資産形成は老後のためだけではない。複利効果・クレカ積立との組み合わせ・配当収入の旅行費活用——若い時期から始める資産形成が旅の選択肢をどう広げるかを整理。若年層取り込みの入口記事。
- INVEST新NISAとマイル、どちらを先に整えるべきかNISAもやりたい、マイルも貯めたい——どちらから手をつけるべきか。順番の考え方とクレカ積立による並走設計を整理。実用×思想統合の記事。
本記事は note では公開していない、MileagePortfolio サイト独占の検証コラムです。情報基準日:2026-05-20。信託報酬・純資産総額・指数構成比率は今後の市場動向と運用会社の判断により変動します。投資判断はご自身でご検討ください。
この記事をもっと深めたい人へ — 本と映像のすすめ
記事の整理だけでは足りない人向けに、関連する書籍と映像作品を置いておきます。
- マネー・ショート 華麗なる大逆転 (2015)
リーマンショックを予見した投資家たちの実話。市場のリスクを物語で体感できる。 - マネーボール (2011)
ブラッド・ピット主演。データと合理性で常識を覆す実話。投資的思考の参考に。 - ウォール街 (1987)
オリバー・ストーン監督。強欲と投資哲学を描く古典。お金との距離感を問い直す。
※当サイトはアフィリエイト広告を含みます。ご購入は本サイトの運営継続に充てられます。
